アドラー心理学をカウンセリングに取り入れる 共同体感覚
この記事では20年近くカウンセラー(2022年現在)をやってきた杉田が、新たにアドラー心理学をセミナーで学んできました。
アドラー心理学の数ある理論や技法の中でもカウンセリング・セラピーの現場で特に使えると感じた部分だけを抜擢してお伝えしていきます。
ですから、あくまでも心理カウンセラー杉田個人の価値観や視点でお話をしているとご理解ください。
私がお伝えしていることが正しいとか間違っているとかということは横に置いといて読まれると良いかもしれません。
共同体感覚
アドラー心理学の中でも特に重要と思われる共同体感覚についてお話させていただきます。
この共同体感覚は我々人間が幸せを感じ充実した人生を送るためにも非常に欠かせない重要ポイントになってくると私は思っています。
もっと分かりやすくお伝えすると人間が幸せになるために欠かせない条件の一つということですかね。
この共同体感覚こそが私が開業間ない頃から、考えていた価値観と一部一致している部分です。
共同体感覚は3つ
前回の記事でもご紹介させていただきましたが、アドラーの共同体感覚は3つから成り立ちます。
①自己受容
②他者信頼
③貢献感
ではこの3つをカウンセラー杉田の視点から、お話していきます。
自己受容
まずは自己受容(ありのままの自分を受け入れる)です。
開業間もない頃から、私は自己受容の大切さを知り、カウンセリングに取り入れたいと考えていました。
我々人間がより生きやすく、より楽しく、より幸せになっていくためには絶対的に欠かせないピースだと思っています。
ですから、カウンセリングでも自己受容の重要性を比喩(メタファー)を使ってお話したり、セラピー(療法)でも自己受容が進んでいくような独自の手法を開発したりしてきました。
アドラー心理学を主体としたカウンセリング講座を受けさせていただきましたが、アドラーが自己受容をかなり重視していることを知り、今まで私がやってきたことが肯定されたような気持ちになりすごく嬉しかったです。
ちなみに私は自己受容のことを心の基礎と言っています。
自己受容=心の基礎
基礎ということですから、それはそれは大切だと思いませんか?
数学の基礎が足し算、引き算、掛け算、割り算だとするともしこの4つが分からなければ、どうでしょうか?
間違いなく数学の応用問題を解くことは不可能ですよね。
私は今までたくさんの方にカウンセリングをさせていただきましたが、この自己受容ができていないことでそれが大きなストレスとなり、自分ではどうすることもできないくらいの悩みとして発展してしまうことも多くみられます。
しかし、自己受容が進むにつれ、最初は暗い表情だった相談者さんも明るい雰囲気に変わっていく姿を何度も目の当たりにしてきました。
自己受容は心を制す
それくらい我々人間のメンタル的なことにとって自己受容は大切だと実感しています。
自己受容については、7つの要素を含めこのサイトで詳しく数ページにわたり記事を書いていますので参考にしてみるのもよいです。
まずは比喩を使って書いている記事がありますので以下にご紹介しておきますね。
他者信頼
他者信頼って表現すると世界中の人々を皆信頼しなければいけないみたいに聞こえるかもしれません。
しかし、100人いるとしたら100人の人々を信頼すると言っているわけではありません。
そんなことをしてしまったら、世の中にはびこっている悪党どもに騙され続けて幸せになるどこじゃないですよね。
アドラー心理学的に表現すると悪党にも何かの事情があるということです。(ここはアドラーの目的論になりますので他の記事でお話します)
いくら自己受容が進んだからといって、自分の周りの人間関係である家族やパートナー、友人、知人、仕事仲間の人たちをまったく信頼することができなければ、どうでしょうか?
おそらく周りから信頼してもらえる確率は低くなり、そのおかげで変にひねくれて、素直になれずスネてしまい孤立してしまうかもしれません。
孤独が好きだからといってもときには人の温かさに触れたり、恋しくなったりするのが人間という生き物だと私は感じています。
私なんて肩の手術をしたとき不安と恐怖心と痛みでメンタルが弱ってしまい人間の優しい心に飢えていましたよ(笑)
それでも「私は一人ぼっちの孤独が好きなんだ」という方がいたとしたら、過去に人間から酷い目にあわされて人間嫌いになり、大きなトラウマを抱えているかもしれません。
人間から酷い目にあわされた犬は、ビクビク怯えて姿を悟られないようにするか、威嚇をして自らを守ろうとします。
しかし、人間から愛情をたっぷりもらっている犬は、愛くるしくて、よく笑い、本当に幸せな表情をしてくれます。
そしてお腹を出したりして忠実に信頼してくれます。
どっちの犬が幸せかは言うまでもありません。
それは我々人間とて同じことだと思います。
簡単に犬で例えさせていただきましたが、それくらい人と人との信頼関係をアドラーは重視しているということです。
どうみても信頼し合っている方がお互いに安心できるし、何とも言えないつながっている安心感、だから日常生活も穏やかに過ごしやすくなるのではないでしょうか・・・。
ではお互いに信頼していないとどうか?
少々大げさな例えになると思いますがお付き合いいただければと思います。
よく映画で悪党が数人集まって、強盗など悪事を働いていくシーンを見たことがあると思います。
ちょっと想像してみましょう・・・
もしあなたがこの悪党集団の一員だとしたら、他の悪党どもへの信頼度はどれくらいですか?
おそらくかなり低いのではないでしょうか・・・。
「いつ裏切られるのか?」
「いつスケープゴート(身代わりや生にえ)にされてしまうのか?」
「わけまえはちゃんともらえるのだろうか?」
「ヘマをすると殺されるかもしれない?」
こんな考えが毎日よぎるかもしれませんね。
どうですか?
これでは毎日不安だし愛情の欠けらもないし、恐怖心と戦っているようなものです。
そして何より仲間と信頼関係でつながっていないと孤独と闘わなければいけないはめになります。
今現在(令和3年)新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている中、孤独や孤立が問題視されている世の中になっているのは皆さんもご存知だと思います。
孤独=存在している価値がない
孤立=居場所がない
私は孤独や孤立について表と裏の解釈を上記のように考えています。
そして以下のようにも解釈できるかもしれません。
他者信頼無し=孤独・孤立
こういったことを予測していたからこそアドラーは、他者信頼を重視していたのかもしれませんね。
反対に表現するとこうなります。
他者信頼=人とつながっている安心感
つまり人とのつながりを感じているわけですから、存在している価値があり、居場所を確保してると解釈できます。
貢献感
人間として生まれてきた以上、他人に貢献していない人はゼロに等しいという考え方です。
正直私はこの考え方を初めて聞いたとき「ホントかよ」って想いが湧いてきました。
中年になると素直さが薄くなって、固定観念がますます固くなってきますね(笑)
私はこのサイトにも詳しく書いていますが、小学生の頃、家庭環境が最悪で不登校にもなり、学習障害で通信簿の成績は1と2ばかりでした。(当時は学習障害とは知りませんでした)
中学の時は自分なりにテスト前日などは夜中の2時くらいまで勉強頑張ったんですけど通信簿の成績は上がることはなかったです。
学年では下から、ベスト10に毎回入っていたくらい劣等生の中の劣等生でした。
自己肯定感めちゃくちゃ下がりますよね(泣)
さてそんな劣等感の塊の自分でも他人に貢献しているとのことです。
ちょっとしたクイズです。
仮に一学年200人の生徒がいたとします。
私は200人中195位だったとします。
そのとき180位の生徒はどんな心理になると考えられますか?
色々推測できると思いますが
「良かったビリじゃなくてまだ下に20人もいる」
と思ったとしたら、どうでしょう
少なくても私はその20人のうちの一人に入っているわけですから、180位の生徒から見るとある意味貢献しているとも言えませんか?
だからと言って、190位の生徒に「あなたは180位の生徒に貢献しているんだよ」って伝えたとしても心に響く可能性は少ないと思いますけどね。
あくまでも「こんなケースでも貢献している可能性もある」ということをお伝えしたかったんです。
もちろん当時は自分が他の生徒に貢献しているなんて思ってもみませんでした。
いくら努力しても勉強ができなかったので、勉強ができる子に憧れていました(笑)
●共同体感覚のまとめ
自分のことを大切にして(自己受容)
関わっている周りの人たちを信頼して(他者信頼)
他人の助けになったり、役に立ったりする(貢献感)
この3つがあるからこそ人は本当の意味での幸せを感じることができるとアドラーが言っていることを学びました。
共同体感覚とカウンセリング
ここまではアドラー心理学の共同体感覚についてカウンセラー目線でお伝えしてきました。
これからは実際のカウンセリング現場でどのように役に立っているのか?
そのことについてお話をしていきます。
自己受容とカウンセリング
すでにお伝えしましたが、私のカウンセリングは自己受容を抜きにしては語れません。
それくらい自己受容を重要視しています。
それには理由があります。
自己受容(ありのままの自分を受け入れる)が進んでいったクライアントさんたちが長年悩んでいた心の問題が霧が晴れたように短期間で解決していった姿を目の当たりにしてきたからです。
一例をお話しすると今でもよく覚えていますが、20年近く対人緊張で悩んでいた男性が相談に来られました。
あまりにも緊張が酷くて、出勤のとき家から最寄り駅に向かう途中でも心臓がドキドキして極度に緊張していまう・・・
そんな状態で会社に行き仕事をこなすとき自分の能力を発揮できると思いますか?
そんな彼が自己受容(ありのままの自分を受け入れる)できただけで嘘のように改善してしまったのです。
それも半永久的に・・・
私はこのとき「自己受容ってすげ~って」強烈に感じました。
こういった事例は数え切れないほどあるくらいです。
私のハゲ頭も自己受容でかなり心が軽くなりました(笑)
注意:自己受容ができたからと言ってすべての悩みや症状がなくなるわけではありません
他者信頼とカウンセリング
さて先ほどは以下のようにお伝えしました。
他者信頼が無いと一体どうなってしまうのか?
孤独=存在している価値がない
孤立=居場所がない
孤独や孤立をしやすくなってしまうということでしたね。
誰だって好きで孤独や孤立しているわけではないと私は考えています。
他者信頼できない方のカウンセリングをしてみるとほとんどのケースで人間から暴力、精神的虐待、いじめ、パワハラ、セクハラなどを受けられていることが非常に多いです。
これは私の価値観ですが、自己受容が進んでくると自然と他者信頼が増していくような気がします。
以前、東北地方から1泊2日コースでご相談に来られた心療内科の看護師さんが自分のことが嫌いで自己受容ができず自分も他人も信頼できず人間関係で悩んでいましたが・・・
彼女は手書きの体験談の中で以下のことを語っています。
「男女ともにモテるようになりました」
その結果、今までより居場所が安定してきて他者への信頼感も深まったと考えられます。
どうやら自分の見たくない嫌な部分と正面から向き合っていくと、他人の嫌な部分を認めやすくなる傾向が我々人間には備わっているようです。
自分の嫌な部分と向き合う→他人を認めやすくなる→他者信頼が深まっていく
このような方程式が出来上がるかもしれません。
もちろん他者信頼を得るためにはこれだけではありませんけどね。
彼女の手書き体験談もご紹介しておきます。
貢献感とカウンセリング
わかりやすくするため職業や仕事に関しての貢献感についてお話を進めていきますね。
仕事をしていないからといって貢献感がないというわけではないということを先にお伝えしておきます。
人を騙すような悪徳業者は別として、本来職業や仕事とというものは多かれ少なかれ誰かの役に立っていたり、助けになっていると思いませんか?
みんなが様々な業種の仕事をしてお互い助け合って、世の中が成り立っているとも言えます。
ご相談内容にもよりますが、私のところでカウンセリングを受けられる8割くらいの方が自己肯定感が低く、自己受容ができていない傾向があります。
自己肯定感が低かったり、自己受容ができていないと自分の持っている能力を最大限に発揮しにくくなると私は考えています。
自己肯定感が低い方のよくある症状ですが
他人の評価ばかりを気にして
緊張して集中できず
言いたいことが言えずに自分を出せない
ちょっと想像してみてください。
上記のような心理状態のときビジネス、スポーツ、学業などで自分の能力を発揮しやすくなるのか?
それとも発揮しにくいのか?
答えを言うまでもありません。
先ほどお伝えしましたが、貢献感とは他人の助けになったり、役に立ったりすることでしたね。
他人の評価をそれほど気にせず、良い緊張感をもって集中でき、自分の想いや意見をしっかりと言える人の方が、他人の助けになったり、役に立てる可能性がはるかに上回ってると私は感じています。
自己受容度が高い=貢献感が増す
自己肯定感が高い=貢献感が増す
とも言えるかもしれませんね。
中にはまったく他人の評価を気にせず自己中で言いたいことをバシバシ言って、他人を傷つけてしまう人もいますけどね(笑)
ざっとではありますが、私なりにアドラー心理学の共同体感覚を語ってみました。
自己肯定感のお話もしましたので興味のある方は以下の記事も参考になります。